教員リレーコラム

季節外れのあなどれない食中毒・・O157感染症

杉山 成司[理学療法学専攻]

この夏もO157感染による集団食中毒がたびたび報道され、残念なことに死者まででました。食中毒の原因には、夏場はサルモネラやカンピロバクターなど細菌感染が多く、冬場はノロウイルスによるウイルス感染がほとんどを占めています。では、このO157による食中毒はどの季節に起こりやすいのでしょう。 O157は大腸菌の一種で、ウシやヒツジ、ブタなど家畜の大腸に生息しており、それらの糞便に汚染された水や食物を人が摂取することで、また感染した人から人へと伝播することで発症します。ただ、大腸菌はもともと人の腸管にあって体外から侵入してくる有害な大腸菌の増殖を阻止するなど、有益な働きをしています。一方で、下痢や腹痛を起こす大腸菌があり、これらを病原性大腸菌と呼んで区別しています。O157もこの仲間です。 ですから、O157の食中毒は夏期に多いのですが、それだけでなく、ピークを過ぎた比較的気温の低い秋や冬でも発生しています。理由は、感染力が強いからです。一般に、食中毒を起こすには100万個以上の菌が必要ですが、このO157、100個程度の極めて少ない菌数が体内に入るだけで病気になるとされています。また、低温に強く冷凍庫内でも生存する、酸性に強く胃(液)を通過しても生存する、食中毒を発病するまでの潜伏期間は2~7日(平均3~5日)などの特徴があります。 予防対策に移ります。O157は口から入って感染します。そこで、まず手洗いを励行し、汚染された食器、器具類による感染拡大を防ぐことが重要です。厚生労働省の「家庭でできる予防ポイント」では、1)生の肉や魚を切って洗っていないまな板や包丁で野菜や果物を切らない、2)加熱して調理する(加熱の目安は中心部が75℃1分以上)、3)乳幼児や高齢者には加熱が十分でない食肉は食べさせない、などを挙げています。 「予防に優る治療はない」。成人では、O157感染の大半が自然治癒するとされていますが、最近も40歳代の死亡例があるなど、死に至る怖い感染症であることに変わりはありません。楽しいはずの食事会。その時、食事内容や状況にもう一度思いを巡らし、冒険を控える余裕も持ちたいものです。
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