教員リレーコラム

病院や施設の問題を作業科学の視点でのぞく

堀部 恭代[作業療法学専攻]

私が学んでいる作業科学は、新しいものの見方を提供してくれる。
今回は、作業科学の視点から施設/病院で起きていることをみてみる。

作業科学では、すべての人が豊かな作業ができる状態を「作業的公正」という。
そして、それが侵害されている状態を「作業的不公正」と言うのだが、それは以下の4つがある。

 ・作業剥奪:自分ではどうすることもできない理由で作業ができない状態
  ⇒例:入院中、危ないという理由でトイレに行くのを止められる(おむつ内で排泄をする)

 ・作業不均衡:行う作業が多すぎたり少なすぎたりする状態
  ⇒例:入院中、やることがなくてただ寝ている

 ・作業疎外:作業はしているがあまり意味が感じられない作業をしている状態
  ⇒例:老人保健施設で、ただ与えられた生活を送っている

 ・作業周縁化:作業を押しつけられ、自分で作業の選択ができない状態
  ⇒例:入院中、入浴の時間・頻度、食事の時間等が病院都合で決められている

作業的不公正の例を病院や施設でみられる状況で説明したが、
我々医療職が、どれだけ対象者を「作業的不公正」の状態にしているのかが分かる。
『入院中だから従うしかない』、『人手が足りないから仕方ない』、そう思う人もいるだろう。
しかし、現状をただ受け入れているだけでは何も変わらない。

作業療法士は、誰もが豊かに暮らせる社会を築くために、
新しいものの見方を持ち、現状を改善する勇気とスキルをもつ必要があると思う。

 
  ※参考 : 「「作業」って何だろう」」 著者:吉川ひろみ 出版社:医歯薬出版株式会社 
      「学びたい世界の作業療法」 『作業療法ジャーナル』 Vol.37 No.3 pp.239-242
                    著者:吉川ひろみ 出版社:三輪書店 出版年:2003

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