教員リレーコラム

「読解力」

齊藤 誠[理学療法学専攻]

 PISAという調査を聞いたことがありますか?  PISAとは経済開発協力機構(Organisation for Economic Co-operation and Development ;OECD)が行っているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度調査であり、国立教育政策研究所のホームページでは以下のように紹介されています。 「OECDが進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査に、我が国も参加しており当研究所が調査の実施を担当しています。PISA調査では15歳児を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について、3年ごとに本調査を実施しています。」 引用:国立教育政策研究所  2018年に実施されたPISAの結果が以下の表の通りです。 saitou_200114.png 引用:国立教育政策研究所 OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント  2015年の前回調査における日本の順位は、科学的リテラシー:2位、数学的リテラシー:5位、読解力:8位でした。  ※どのような問題が出題されるかはこちら(2018年調査問題例)をご参照ください。  特に読解力の順位が落ちたためか、読解力低下を懸念する記事や低下が生じた要因を検証している記事が散見されました。 「近年、教材の文章を理解できない子供が増えているとの声が、教員らから聞かれる。今回、読解力の調査で、成績下位層の割合が顕著に増加した。現場の懸念を裏付けていると言える。  正答率が低かったのは、文章から必要な情報を探し出したり、文章の信用性を吟味したりする問題だ。自分の考えを、根拠を示して説明する自由記述式問題でも、得点が振るわなかった。」 引用:読売新聞 社説(PISA調査 読解力低下に歯止めかけたい) 2019年12月4日 「読書習慣のある生徒の方が平均点が高いことも分かった。小説などを月数回以上読む生徒の平均点は531点で、読まない生徒より45点高かった。新聞を同頻度で読む生徒の平均点も、そうでない生徒より33点高かった。」 引用:産経新聞 PISA調査 日本の読解力低迷、読書習慣の減少も影響か 2019年12月3日  以前から読解力を向上させるための手段として、活字に触れる機会を増やすことは推奨されてきたように思います。しかし、今回の調査結果においても、因果関係は明らかではないです(読解力があるから新聞や小説を読むのか、小説を読むから読解力が向上するかは不明)。実際に読書量の低下が読解力低下の要因であるとする主張に反対するような記事もあります。 ※引用部分だけでは意味が分かりにくいので、是非、引用元の記事をご参照ください。 「新聞の社説は、活字文化にもっと親しむことが読解力向上にとって重要だといっているが、これほど皮肉な主張はない。新聞の社説だからといって真に受けないようにしなければ現代社会を生き抜くための読解力は向上しないからだ。」 引用:PRESIDENT Online 新聞やテレビを信じすぎる日本人の低い読解力 2020年1月9日  上に紹介したように、少し調べるだけでも、インターネット上には様々な考え方や意見を認めます。様々な情報が容易に集まる現代においては、情報収集能力だけではなく、情報を批判的に捉え、信頼性や妥当性を吟味する能力は非常に重要です。   「読解力」を鍛えるためには、何をすべきでしょうか。 本学学生の皆さんも、色々な情報を科学的に分析し、自分の考えをまとめてみてください。 それこそが読解力を向上させる手段の一つになる可能性があると思います。
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