教員リレーコラム

「冬の花見」

石黒 茂[作業療法学専攻]

 本学近くの清洲城周辺は桜の名所である。春になると五条川沿いの桜の下に、おおぜいの人が集まってくる。昼に散歩に出かけ、花見をするのは春の楽しみの一つだ。  本学に勤めていつの間にか7年が経つ。昨年までは、気候の良い時期にお城へ散歩に出かけるだけであったが、コロナ禍で運動不足になっていることもあり、今年になってからは一年を通して散歩に出かけるようになった。季節を問わず同じところを歩いていると、新たに気付くことがある。その一つは、秋の終わりから冬にかけて、清洲古城跡公園で満開の桜がみられることだ。正確な種名までは分からないが、いわゆる四季桜である。そこに季節外れの桜が咲くことは前々から知っていたが、今まではチラホラ咲いていたことしか記憶にない。  冬景色の中の満開の桜は、桜色と紅葉の赤紫色と常緑樹の緑色が混ざって、絶妙な模様を醸し出している。有名な小原(豊田市)の四季桜の里とは規模が違いすぎ、比べるまでもないが、それでも古城跡の森と清州城をバックにして見るとなかなかの絶景だ。満開の桜の木の周りには、葉を落としたソメイヨシノがあり、枯れ木に花が咲いているようにも見える。正に「花咲かじいさん」の世界だ。春と違って花見客がいないのは少し寂しいが、一人ゆっくり花見をするのも、また格別である。  伊吹おろしに寒さを感じながら、冬の花見をしていると、渓流釣りの手ほどきを受けた人からかつて教えられた言葉がふいに蘇った。もう40年も前の言葉である。  「この川で魚を釣りたければ、この川の魚のことをよく知りなさい。この川の魚のことを知りたければ、この川のことをよく知りなさい。この川のことをよく知りたければ、季節を問わず川に入って、川の様子を観察しなさい。」  年がら年中見ていて、はじめて分かることがある。学校でも、入学した学生を卒業させて、はじめて分かることがある。学校の教育にも通ずる言葉だと改めて思う。  最後に、年の締めくくりとして  「コロナも治まり、来年の春は晴れて大っぴらに花見ができますように」
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