濵田 光佑[理学療法学専攻]
キュビズムという画法をご存知でしょうか? 言葉は聞き慣れなくても、キュビズムで描かれた絵は目にしたことがあるはずです。 キュビズムで特に有名な画家は、創始者であるピカソです。 ピカソの絵と言えば、何となく纏まりなく、グチャグチャで、本当に上手なの?と疑いたくなりますよね? 今皆さんがイメージした画法が、「キュビズム」です。 正直、絵のことは私もよくわかりません。 しかし、キュビズムの本質的な考え方は好きなのです。 キュビズムは色々な角度から見た対象物を一つのキャンバス中に収めたものです。 正面からも左右からも上下からも全ての方向から見た対象物を描いたのです。 確かに不思議な絵になるのも納得しますよね。 ピカソの絵を好きになったのは、イタリアのピサを訪れたのがきっかけです。 ピサに立ち寄ったのは、所謂「ピサの斜塔」を見たかったからです。 あれは、なかなか立派でした。 観光を終えピサ駅に到着した際に、偶然にも日本の理学療法士の大先輩にお会いしました。 少し立ち話をしているうちに、一緒に小児リハビリクリニックの見学に行かないか?と誘っていただいたのです。 せっかくの機会でしたので、もちろん同行させていただきました。 結果、非常に面白い経験をさせていただきました。 小難しい治療主義の説明は避けますが、その施設のイタリア人療法士は当時の私には理解しがたい治療を行っていました。 ただし、一貫して子どもの持つ多面性と生活歴を徹底的に診療に取り入れるリハビリを実施していることは理解できました。 日本での実践例が当時はまだ無く、非常に興味深く知的好奇心を刺激されたことを覚えています。 その施設の壁にかけられていたのが、キュビズムで描かれた「ドラマールの肖像」でした。 現場では、お洒落な絵だなーと思っただけでしたが、ホテルに帰りその絵について調べるうちにやけに気になりはじめました。 何故かと言うと、「キュビズム」で描かれたその絵がイタリア人療法士の考え方を反映しているように感じたからです。当時の勝手な感想でしたが、憧れのような何とも言えない気持ちを抱きました。 私自身が療法士としての経験年数を重ね思うことは、やはり個人の多面性を理解し文脈に沿ったリハビリを提供することの重要性です。 今思えばイタリアでの経験が、私のリハビリテーションの考え方に大きく影響しているのだと思います。 思い出話は終わりますが、2020年度は私にとっては変化の多い年でした。 環境も自分自身も変化する中で、療法士としての初心を忘れないようにしたい。 そして常に色々なことに挑戦し、新たな価値観に触れたいとも思います。 そんな思い出の品「ドラマールの肖像」 少し前からレプリカを研究室に置いています。 研究室にお立ちよりの際は、是非眺めてみてください。
教員リレーコラム