教員リレーコラム

「臨床をはなれて」

松田 裕美[作業療法学専攻]

 私が臨床をはなれ、今年の5月で丸3年が経ちました。3年間はあっという間なようで、かなり昔にも感じます。現在もおかげさまでそれなりに忙しく、楽しく過ごすことができていますが、臨床にいた頃を想うとがむしゃらに頑張っていたなぁと懐かしい気持ちがします。  日々の集団プログラム、作品の展示、当日使った物品の片付けなどはもちろんですが、治療の中で「集団での治療に参加する前段階の個別のプログラムが必要だ」と感じ、個別プログラムの作成やその体制づくりに力を注ぎました。私が働いていた現場では、個別で点数を取る仕組みがまだなく、集団プログラムの質や量(参加者の人数)を担保しながら個別プログラムを実施していくことに試行錯誤してきたなと思いだします。  縁あって教員となり、授業準備や自分の論文と向き合う中で、自分のこれまでの働き方(物事への取り組み方)や生き方を少しずつなぞり、振り返る機会が多くあります。  臨床にいたときには気づけなかったことはたくさんあり、今更ながらに自身の運営していたプログラムのこと、患者さんのこと、スタッフのこと…を思い出し、反芻しつつも新たに作業療法をしようとする学生と触れあっています。  正直、作業療法士の資格を持ってさえすれば代わりは誰でもいますし、自分にしかできないこと、その人にしかできないことなんてそう多くないと思います。(むしろ、物事を半永久的に、細く長く持続させていくためには”自分にしかできないこと”や”その人にしかできないこと”を作ってしまってはいけないのかもしれないとも思います。)  先日、臨床で勤めていた時の同僚から、「○○先生が△△さんに個別プログラムをやりはじめたよ」という話を聴きました。その時、「あぁ私が臨床に携わっていた意味も少しはあったのかもしれないなぁ。」と思うことができました。  こんな些細なことですが、混沌とした日々の中でも自分自身の気づきを大切に日々過ごしていけたらいいなと感じました。
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