横山 剛[作業療法学専攻]
NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」をご覧になっておられた方がいらっしゃると思います。 この3月下旬で最終回となりましたが、比較的好調な視聴率のようでした。青年のマッサンが妻のエリーとの出会いを通し、生涯にわたる仕事、ウイスキー作りに取り組んでいくといった物語です。まだ洋酒が日本人になじみのない時代に、本場のスコットランドでウイスキー作りの修業をし、エリーと帰国後、紆余曲折をくりかえしながら本場に負けない日本のウイスキー作りに取り組む姿が描かれています。そのストーリーの詳細はネットなどで確認いただくとしますが、私がこのドラマに夢中になった理由は、エリーは人生を冒険と位置付け、果敢にチャレンジし続け、いつしか取り巻く人々が私のようにエリーに引き付けられていく姿を見たからです。また明日はどうなるか分からない身であっても、あきらめず果敢にチャレンジを続け、夫マッサンが心の底から願い続ける”本物”のウイスキー作りにあきらめずに取り組む姿に感銘を受けたのです。 何かを極めようとチャレンジするとき、逆説的ですが何かを犠牲にする(手放す)ことが必要です。本学学生の皆さんは、理学・作業療法士になろうと少なくとも思っているはずですから、それをマスターする、またそこに到達するためには、何かを犠牲にする必要があろうと思います。ドラマでは、実際に主人公マッサンは様々な誘いを断り、信念である”本物”のウイスキー作りに専念するための選択をし続けました。もちろん失敗することもありました。 私はこれまで、心理社会的発達に関しての学習・研究をし青年期にある学生の皆さんに関わってきました。学生とお話しする中で学生の皆さんは夢を持っているのですが、その中にそれまでの生活に馴染んだものを手放せず「あれもこれも」のスタンスを保ち続けようとする人たちが、結局のところ理学・作業療法士になる夢を手放すことになってしまうのをしばしば見てきました。青年期の発達課題は、「アイデンティティの確立」ではありますが、もっと具体的なことで述べると「職業選択・決定」です。「職業選択・決定」はもうお分かりのように「あれもこれも」の世界ではなく「あれかこれか」の世界です。 学生の皆さんは、”新しく”理学療法士・作業療法士に”なる”のですからこれまでの生き方を見直し(手放し)”新しい何か”が必要になるのです。この3月に卒業した学生の中に”新しいもの”になるために”新しい何か”を必死で探索し続け職業決定をした人がおりました。在学期間中、ご自身を探索し続けてきたのです。これまでの「あれもこれも」から「あれかこれか」の世界にたどりつき、これまでの生き方を手放したのです。これからもそのような学生の支援を続けていきたいと思っております。
教員リレーコラム