杉山 成司[理学療法学専攻]
とうとう夏本番を迎えます。熱中症への対策を怠ってはならない季節ですが、夏の季語 にもなっている”蚊”の時期でもあります。その蚊、ちょっと前までは、刺されると日本 脳炎やマラリアなどを心配しました。しかし、ここ1~2年はほとんど耳にしたことのな いデング熱やジカ熱などへの警戒が叫ばれています。さらに、新しくチクングニア熱への 注意も言われています。 これら蚊が媒介する感染症はいずれもアジアや中南米など外国からの輸入ものと考え られていたのですが、2014年にデング熱の国内感染例が報告され、たちまち有名になり ました。また、ジカ熱ですが、南太平洋諸国および中南米を中心に急速に拡大しているこ と、妊婦さんが感染すると母体から胎児に伝染して赤ちゃんが小頭症(脳の発育が悪く小 さな頭で生まれ、知能障害が顕著)など重大な先天異常になること、性行為で感染し特に 妊婦さんでは避妊対策などが必要なこと、加えて、今年8月にはブラジル・リオ(南半球 に位置し冬季ですが)で夏季オリンピックが開催されるため、世界各地での流行が懸念さ れること、などなど大きく問題になっています。 これらの感染症ではともに「発熱と全身の発疹」が特徴とされています。けれども、蚊 に刺されても無症状の人も少なくなく、また軽い例では”かぜ”に似ている場合もあり、 にわかに診断できないこともあります。他方、デング熱による「重症型デング」「デング 出血熱」など放置すれば死に至るような病型もありますが、幸い、日本での死亡例はあり ません。いずれにしても、現時点では特効薬はなく利用可能なワクチンもありません。 たかが蚊、されど蚊。リオ・オリンピックに参加するもよし、日本で応援するもよし。 皆様、防”蚊”対策を宜しくお願いします。
教員リレーコラム