教員リレーコラム

To bee ,  or not to bee ,  that is the question .

石黒 茂[作業療法学専攻]

5月の日曜日の午後、「大きなハチがいる」という妻の叫び声に慌てて駆けつけると、 家の庭にタイワンタケクマバチがブンブンと羽音を立てていた。 体長は2cm程で、体色は黒色、ホバリングし羽音が大きい。 刺されたら怖いと思うのが普通である。 庭の周りをよく見ると、いつの間にか塀に立てかけてあった竹に穴を開け、巣を作っている。 タイワンタケクマバチは、平成18年に豊田市で初めて記録された。 どうもアジア大陸から輸入された竹に混じって侵入してきたらしい。 その後、愛知県、岐阜県を中心に分布を広げ、専門家の間では問題になっている種である。 駆除しようかとも思ったが、実物を見るのは初めてであり、しばらく観察することにした。 タイワンタケクマバチと同様、野生化し問題になっている外来種のハチに、 セイヨウオオハナマルバチがいる。 20年ほど前、果実栽培の受粉に使うため導入されたのだが、 日本では繁殖しないという予想に反し、野生化してしまった。 特に北海道の生態系に大きな影響を与え、平成18年に特定外来生物に指定されており、 今も全国的に分布を広げている。 私たち生物学関係者は外来生物の野生化を忌み嫌うが、 セイヨウミツバチも、在来種の代わりに蜂蜜の採取や作物の受粉のために導入されたもので、 外来種の助けがなければ何ともならなかったのだ。 そこで今、注目を集めている在来種のクロマルハナバチやニホンミツバチであるが、 在来種であっても特定の地域のハチを繁殖させ、分布を広げてしまっては問題が残る。 ハチに代わって人の手で受粉させればいいが、値が跳ね上がってしまう。 あちらを立てればこちらが立たず、兎角にこの世は住みにくい。 しかし、簡単に解決策が見つからなくても、 自分たちも一員である生態系での出来事に関心を持ち続けることが重要だ。 新聞を読んでいたら、「みつばちの大地」* という映画が、東京で上映されだしたそうである。 マークス・イムホーム監督がミツバチの大量死や失踪の原因を追及しに世界各国を回り、制作した映画である。 批評では、スクリーンに大映しにされる彼らの姿そのものの美しさに魅せられたとあった。 名古屋でも7月末から上映されるということで、見に行くのが楽しみである。 生態系の一員として自然の素晴らしさに触れ、その素晴らしさを実感したいものである。 そして、自分もミツバチになったつもりで考えたい。 「That is the question. 」  ( * みつばちの大地」 監督・脚本:マークス・イムホーフ    © 2012 zero one film/allegro film/Thelma Film & Ormenis Film )
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